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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)619号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

同第二點について。

たとえ、論旨に指摘するように、原判決の事実摘示と、これが採證の用に供した各始末書、申述書の記載との間に、被告人が偽造転出證明書に使用した架空人物の氏名に不一致の點がありとしても、右は要するに、偽造文書に転出者として表示せられた架空人物の氏名に過ぎないのであって、それが甲であるか、乙であるかということは、本件偽造文書の重大な要素をなすものでなく、作成名義人その他の記載内容において、原判示するところと右始末書等の記載とが一致する以上、右のごとき瑣末の點に差異があっても、文書の同一性を害するものではないのであって、原判決が右始末書、申述書の記載内容を以て、判示事実に照應するものと判斷したのは、所論のごとく、これを違法ということはできないのである。本論旨も、また、採用するに足りない。(その他の判決理由は省略する。)

以上のごとく本件上告は理由がないから、刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)

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